自然な発音だけではない。-「フォニックス」が子供の英語学習に大事な理由
ここ数年で急激に国際化が進み、海外のみならず国内でも多くの外国人を見かけるようになりました。また小学校では英語の科目化の低年化が進むなど、 英語学習は避けては通れない道となりつつあります。
中でも、英語の発音は日本人が英語を学習する際に苦労するエリアの一つでもあり、 子供に自然な英語の発音を身につけさせるにはどうすれば良いのか?と調べるうちに、「フォニックス」を知ったという人も多いはず。
現在では子供向け英会話やフォニックス教材など多種多様なサービスが提供されていますが、 今回は、今注目されている英語学習の一つ「フォニックス」について詳しくご紹介したいと思います。
目次
どうして日本人にとって英語は難しいの?
フォニックスについて説明する前に、なぜ英語の発音で日本人が苦労するのか?
その理由について考えてみましょう。
そもそも日本語と英語は構造や発音など言語的にとてもかけ離れています。
その為、英語と日本語を交互に聞くだけでも、意味は理解できなくとも、言語の違いがはっきりと分かると思います。 それは日本語と英語の音やリズムが全く異なるからです。
例えば、日本語は「あいうえお」の5種類、英語はA, E, I, O, Uの5種類と母音の数は基本的に一緒ですが、 英語には文字の組み合わせによって母音と子音の両方になるY があります。
文字Yが "cry", "sky", "fly","my"のような組み合わせの場合:
母音の「イ」として「クライ」、「スカイ」、「フライ」、「マイ」と読みます。
しかし "yacht" ”young” ”yam”のような組み合わせの場合:
子音の「ヤ」として「ヤット」、「ヤング」、「ヤム」として読みます。
日本語では、「イ」は「イ」としか読めませんね。この1文字を取っても、英語には音にバリエーションがあることがよく分かります。
また英語の母音は短母音と長母音、二重母音、三重母音などに分類され、更には音の観点からみると、英語は20種類にもなるのです。
では日本語の子音はどうでしょうか?
現在の主流学説によれば「か・さ・た・な・は・ま・や・ら・わ行」の9種の清音、「が・ざ・だ・ば行」の4種の濁音、
「ぱ行」の1種の半濁音と合わせて14種類あります。
それに対し、英語の子音は21文字あり、有声音と無声音がある上に音は24種類になります
B, C, D, F, G, H, J, K, L, M, N, P, Q, R, S, T, V, W, X, (時には Y), Z
そのうえ子音と母音が組み合わさった場合、
子音が一つの場合:
- Go(子音+母音)
- On(母音+子音)
- Ton(子音+母音+子音)
複数の子音が混ざった場合:
- Pro(子音+子音+母音)
- Old(母音+子音+子音)
- Spree(子音+子音+子音+母音)
- Arcs(母音+子音+子音+子音)
- Strenghs(子音+子音+子音+母音+子音+子音+子音)
母音と子音だけでもこのような違いがあるので、英語の発音が難しいと感じることは当然でしょう。
日本語ではひらがなを覚えると基本的にすぐ本を読むことができるのに対し、 英語ではアルファベットを覚えた後にフォニックスを習わないと読むこと、書くこと、更には聞くことや話すことが難しくなります
言い換えるとフォニックスを早い段階で習得すれば、言語の4技能全ての上達につながるのです。
フォニックスとは?
英語は歴史を通して他の言語から綴りを変えることなく多くの単語を吸収してきました。その結果、書かれた英語の形は多くの言語(旧英語、旧ノルウェー語、
ノルマンフランス語、クラシックラテン語、ギリシャ語、そして多くの現代言語)の綴りパターンを含んでいます。
これらの重複するスペルパターンは、多くの場合、同じ音声のスペルが異なる可能性があり、逆に同じスペルが異なる音を表す可能性があります。
このように、綴り文字と発音の関係性を明確に教えてくれるのがフォニックスなのです。
フォニックスは、正しい読み方の学習を簡単にさせる方法の一つで、英語圏の子供には英語の読み方を教える有効な方法として普及しています。
例えばdog.
アルファベットのまま読むと、「ディー・オー・ジー」 ですが、実際の読み方は 「ドッグ」です。
続いて、fog.
アルファベットのまま読むと、「エフ・オー・ジー」 ですが、実際の読み方は 「フォッグ」です。
もう少し複雑な例だとどうなるでしょうか。
例えばこの3つの言葉を比較してみましょう。
free
ski
happy
free, ski, happy最後の綴りが違うのに 発音は全て3つとも「イー」で終わります。
逆の例を見ていきましょう。
cough
though
through
同じ’gh’ で終わっていても、発音はそれぞれ「フ」、「ウ」、「ウー」と異なります。
このように、単語になったときの組み合わせにより、読み方が変わってくるだけでなく、つづりのパターンも規則に従う度合いが異なります。
更には、文字数と音声の間に一対一の関係はありません。例えば thとchはそれぞれ単一の音を表し、foxのxは2つの音(ks)を表します。
ここで気をつけたいのが、フォニックスは絶対ルールではなく、いくつか例外パターンがあります。 その為、フォニックスを覚えても意味が無いのではないだろうか?と不安に感じる人もいます。しかし、フォニックスはデコード(読解)を高める効果があるとされ、 あくまでも一般ルールとして事実多くの英語圏の子供達に使用されています。
したがって、フォニックスのルールを全てマスターする必要はなく、一般的なフォニックスを学びさえすれば、 発音だけではなく読解力など後の学習に必ず役立ちます。
フォニックス学習について
フォニックスは、アルファベットや文法とは違い日本では定着していない英語学習方法であるため、最近開発された新しい学習方法なの?と思う人もいるかもしれません。
しかしその歴史は古く、1655年にフランスの数学者であるブレーズ・パスカル(Blaise Pascal)により、 現在でも最も強力な研究支援を得ているシンセティックフォニックス(synthetic phonics)として知られるフォニックスの最初のモデルが生み出されました。
シンセティックフォニックスでは、まず最小の文字の組み合わせから始めます。
ー主な順番ー
- 文字と音の紹介
- 文字の組み合わせと音声の紹介
- ブレンディング(混合)とセグメンテーション(分割)の紹介
- 解読可能な文章の使用
もう少し具体的に説明すると
文字と音の紹介:
a,b,c,d,e,f,g -‐♪ の歌にもあるように英語のアルファベットの文字の認識と読み方を覚えます。
文字の組み合わせと音声の紹介:
少数の文字と音を同時に学び、混乱を最小限に抑えるために 'b'と 'd'のように、似たような文字は同時に教えません。
英語を母国語としない子供達にはこれを教える順番が特に大事になります。
ブレンディング(混合)とセグメンテーション(分割)の紹介:
良いフォニックスプログラムでは、ブレンディングは音が導入された直後に教えます。例えば文字 's'、 'm'、 'a'、 't'、 'i'がグループとして教えられている場合、
子供たちはそれらを 'sit'や'am'のような単語に混ぜ合わせることを学びます。また「sit」の真ん中から「i」を取り出し、その代わりに「a」を入れると、
「sat」という単語になることなどを学びます。このプロセスによって、書かれた言葉がコードであり、解読できるコードであることを理解し始めます。
デコード(解読)可能な文章の使用:
これまで習った単語が入った文章を読む練習をしていきます。単語全体を読むことができるようになると、次に単純な規則に従わないけれどよく使用されるsight words
を覚えます。Sight=視覚、Word=単語で、目にしただけで理解できなくてはいけない重要単語のことです。よく目にする単語、頻出単語という意味もあります。
このように子供が習得したフォニックスのスキルを使用して、短い単語と頻繁に使われるsight wordsで構成された文章や短編小説を読む練習は、 文章が書かれる規則と句読法について学ぶ絶好の機会になります。
一度解読を理解した後の過程ははるかに簡単になります。なぜなら、文字の組み合わせと音声の関係を学び、混ぜ合わせることができれば、 将来遭遇するほとんどの単語を読むことができるようになるからです!
日本人がフォニックスを学ぶときに気をつけたいこと
フォニックスは英語圏の子供達に使用されていますが、日本人がフォニックスを学ぶ際に気をつけることはあるのでしょうか?
英語圏の子供達は、家や学校など日常で自然な英語の「音、リズム」を聞いています。その為、聞くことで音の違いを理解するPhonetic Awareness(音韻認識)が自然と身につきますが、日本での生活でまず英語を日常的に聞くことは、ほとんどありません。
その為、フォニックスを学習する際には、英語で沢山話しかけてくれるネイティブ教師による指導、または英語の会話やストーリーが録音されたCDなどを普段から聞き、 音韻認識を鍛えることで、更にフォニックスの効果を高めることができます。
そして、何よりも正しいフォニックスを最初から習うことが重要です。そのためには、 生徒特定のニーズに見合った指導ができる教師から習うことが最適です。
例えば日本人の子供の場合、
- 日本語の読解力はどの程度あるのか?
- ローマ字の認識
- フォニックスの指導を始める前に、生徒が単語の中の音を認識するスキルを持っているか?
- 同じ音を持つ異なる文字の組み合わせなどの規則に生徒が混乱していないか?
などを予め理解し、そういった点を踏まえた上で、生徒に個別で指導できる教師が理想的です。
いつから始めるのがいいの?
3歳頃から始めるのがベストとされ、アメリカでは一般的に5歳からキンダーガーデンに入学するとともにフォニックスを学びます。
フォニックス学習により基本的な文字の組み合わせのコツを覚えることで、自然と知らない単語も予測して読むことができ、 どんどん読解力が広がるので、小学2~3年生までに習得することでその後の学習にとても有効的であるといえます。
上記にも述べましたが、気をつけたいポイントとしてこの時に正しい英語の発音の仕方を習うことが重要です。
なぜなら、一度覚えた発音を変えることは簡単ではないからです。
最初から正しい発音を習得することで、リスニング、読解力、会話力の向上に繋がり、英語を母国語とする人との会話がスムーズになり、
いずれ海外で活躍の場が広がるでしょう。
アメリカのハーバード教育学大学院もフォニックスの重要性を主張しています:
「歩くことのように脳が発達することを期待している「期待される経験」スキルとは違い、読書は「経験に依存する」ものなのです。つまり、
歩くことは自動的にそれを理解するよう脳に本能的に備わっていますが、読むことは脳が自動的にそれを理解するよう予め備わっているものではないのです。
人間の発明なので、音や面白い歌に始まって読む力を学ばないといけないのです。
ジャック・ションコフ教授
読むことを学ぶ過程で、文字の並びを見て自動的に単語に変換することにまだ自信がないため、基本的な組み合わせの言葉を暗記する段階が必要です。
例えばDr.Suessの代表的著書Hop on Popはとても価値のある本です。一見短い言葉の繰り返しの簡単な本のように見えますが、
焦点は韻であり、次にくる言葉が何か予め予想できるので、フォニックスを覚えると同時に絵を見ながら言葉の意味を理解できます。
語学専門家キャサリン・スノー教授」